■■■B000BL 美術館内部・夜(背景CG)
???「しめしめ。これが今回のターゲット――『黄昏に燃ゆる貴婦人』なのか」
■■■A001 アリス・怪盗シルエット(背景CGに重ね処理) ※シルエットは完全な黒ではなく、僅かにそのキャラクターの姿が見える感じで。
???「うん。これに間違いないね」
■■■A201 フィア・妖精シルエット(背景CGに重ね処理)<アリスと並べて表示>
月明かりに照らされる絵画の前で、ボクたちは今回のターゲットをじっくりと鑑賞していた。
???「暗くてよく見えないけど、絵心の無いボクでも、いい絵だってことが伝わってくるなぁ」
???「誰が見てもいい物だって分かるくらいのものじゃないと意味がないから。それだけ、この絵に込められ
た想いの力はすごいってことだよ」
???「ふ〜ん。これって、いくらの絵画だっけ?」
???「テレビでは三億円の絵画って言ってたかな。」
???「うわっ、すごい高いんだね。こんなの十万ちょっとでありそうな気がするけど……」
■■■A001E 怪盗驚きシルエット(背景CGに重ね処理)<フィアと並べて表示>
???「ちょっと〜。そんな安物と一緒にしないでよね。ほんと、アリスは芸術がどんなものか分かってないよ
ね」
アリス「え〜〜、十万ってボクにしてみれば大金だよ? お小遣いの約三ヶ月分だし」
■■■A001 アリス・怪盗シルエット(背景CGに重ね表示)<フィアと並べて表示>
???「アリスの視点から見ればそうかもしれないけど、絵画としての視点から見れば十万の絵なんて掃いて
捨てるほどあるんでしょ?」
アリス「う〜ん、まあオリジナルをコピーした絵でもそれくらいするものもあるし、掃いて捨てるほどあるにはある
んだけど……」
それにしても「掃いて捨てる」という表現はやや酷い気がする。
???「でしょ? そんな絵と一緒だと思われるようなものなら、フィアは全然気にも留めないよ。フィアが求め
るものは、人の想いが十二分に込められたものなんだから」
アリス「でもさ、この前は高価な宝石をもらってきたよね。あれは人の想いとか関係なさそうだけど?」
フィア「フィアが求めているものは、全部が全部、一概に人の想いが込められたものだけじゃないんだよ。その
存在自体に価値があるものも求めているんだよ」
アリス「よく分からないなぁ。結局、値段が高ければいいってこと?」
フィア「違うよ〜。詳しいことは、出逢った時にちゃんと説明したでしょ?」
言われて少し思い返してみる。
アリス「……ごめん。綺麗さっぱり覚えてない」
フィア「え〜〜?! じゃあ……もしかして、何で自分が怪盗しているのかも分かってないの?!」
■■■A201E 妖精驚きシルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
アリス「あれでしょ? 何かの理由でフィアが困っていたから、それを助けるために何でか知らないけどボクが
怪盗をしているんだよね?」
一生懸命、昔の――フィアと出逢った時の記憶を掘り起こしてみるが、これしか記憶に残っていなかった。
しっかりと話は聞いたはずなのだが、ボクの頭では少し難しくて記憶に留めておけなかったのかもしれない。
フィア「全然分かってないじゃん……。うぅぅ、あの時に一生懸命説明したのに……」
■■■A201B 妖精悲しみシルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
アリス「まあまあ。そんなに落ち込まなくても。ほら、理由が分かってなくても、結果的にはフィアの助けになっ
てるわけだし」
フィア「それはそうだけど……それでもしっかり覚えていてほしいよ。アリスにとっても、かなり大事なことだし」
アリス「ボクにとっても? 何で?」
フィア「はぁ。また最初から説明するんだね」
■■■A201H 妖精呆れシルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
フィアは肩を落としてガックリとうな垂れる。
アリス「あはは。ごめんね、フィア」
フィア「今度は余計な部分は省いて、なるべく分かりやすく簡単に教えることにするよ。その方が良さそうだもん」
■■■A201 フィア・妖精シルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
アリス「ボクもその方が嬉しいかな。頭弱い子だし」
フィア「ねぇ、そのセリフ、自分で言って悲しくない?」
アリス「え? ……えーっと――」
…………………。
…………。
……あ、ちょっと悲しいかも。クスン。
※一時、画面を暗転。画面中央から、時計回りに黒くする。
■■■B000BL 美術館内部・夜(背景CG)
●●●SE000 非常ベルの音(ジリジリジリジリ!)
夜の静寂を破るように、突如、けたましい非常ベルの音が美術館全体を包み込んだ。
アリス「うわっ、またやっちゃった……」
■■■A001G 怪盗汗顔シルエット(背景に重ね表示)
右手に持つのはターゲットだった絵画。
そして左手が押しているのは火災報知機のボタンだった。
絵画を壁から外してありがたく戴いたまでは良かったのだが、立ち去る際に何も無いところで転んで思いっきりボタンを押してしまったのだ。
おかげで当然の如くベルが作動してしまい、ボクたちがここにいることが一気にバレる羽目になってしまった。
フィア「アリスのドジ! これで何回目なのさっ!」
■■■A201E 妖精怒りシルエット(背景に重ね表示)<アリスに並べて表示>
アリス「えーっと……五回目かな? あ、しかも五回連続だね。あはは。現在新記録更新中だ」
■■■A001G 怪盗汗顔シルエット(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
フィア「笑い事じゃないでしょー!」
●●●SE010 殴る音(バシン)
アリス「あぅ、痛いなー。何するのさ〜」
■■■A001B 怪盗悲しみシルエット(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
頭を叩かれて一瞬よろけてしまう。
小さいくせにすごい攻撃力だ。
フィア「これが怒らずにいられるもんですか! せっかく今度こそは穏便に事を進めようとして、わざわざ魔法を使って警備員を寝かせたっていうのに、これじゃあ全然意味ないでしょ!」
アリス「うっ……それはそうだけど、ボクの魔力はさっきのスリープを使ってもまだ余っているし、逃げれないことはないはず。大丈夫、何とかなるよ」
■■■A001 アリス・怪盗シルエット
フィア「はぁ。それは魔力残量が少なくなって起こる現象のことを綺麗さっぱり忘れている発言だよね」
■■■A201H 妖精呆れシルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
アリス「ん? 何か起こるんだっけ?」
そのことについては何か記憶の片隅に残っているのだが、それを正確に引き出すことが出来なかった。
何かすごくボクに関しての重要なことだった気もするけど、あの時は眠気眼(ねむけまなと)で聞き流してたからなぁ。
フィア「……信じられない。最初の説明の時に聞いて驚いていたのに……」
フィアは額に手を当てながら、やれやれといった風に首を左右に振る。
そしてそのことについて説明しようと口を開こうとした矢先、
●●●SE020 足音(ダダダダダダッ)
遠くから急いで迫ってくる足音が複数聞こえた。
同時に叫び声が壁を反響してあちらこちらから聞こえてくる。
他の場所にいた警備員が報知機の音を聞いて駆けつけてきているようだ。
フィア「人が来るよ! すぐにこの場から逃げないと!」
■■■A201 フィア・妖精シルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
アリス「言われなくても分かってるって。それに慌てなくても大丈夫、大丈夫。いざとなったら魔法で何とかするし」
フィア「だ・か・ら――って、今はゆっくり話してる暇はないか……。でもこれだけは言っておくけど、アリスの魔力量はいつもより少ないんだから、逃げるにしても魔法は最低限度で押さえてよ。後で後悔するのはアリスなんだからね」
アリス「何だか理由は分からないけど、フィアがそこまで言うなら分かったよ。変に挑発して遊ぶようなことは止めて、今日は大人しく逃げればいいんでしょ?」
フィア「今日じゃなくて、『いつも』そうしてくれるといいんだけどね」
■■■A201H 妖精呆れシルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
そんなフィアの言葉は聞こえない振りをし、ボクはお目当てのモノをしっかりと抱えてその場から逃げ出した。
※一時、画面を暗転。画面中央から、時計回りに黒くする。
●●●SE030 ガラスの割れる音1(カシャーン)
警備員「いたぞ! 向こうだ! 逃がすなー!」
■■■B001BL 美術館屋根上・夜(背景CG)
アリス「無駄無駄〜。ボクは誰にも捕まらないよ〜だ」
■■■A001 アリス・怪盗シルエット(背景に重ね表示)
来た道を戻ろうとしたのだが、あいにくその道からは警備員が迫ってきていた。
それなら逆の道を、と思えば、魔法で寝かせていた警備員がベルの音で起きてしまっていた。
前も後ろもダメならば、横を行くのみ。
仕方なく窓ガラスを破り、屋根伝いに逃げることにしたボクだったが、
アリス「ほい、っと――って、あ……ヤバ、落ちるっ!」
■■■A001E 怪盗驚きシルエット(背景に重ね表示)
フィア「アリス?!」
■■■A201E 妖精驚きシルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
屋根から屋根へ飛び移るとき、ちょっとした油断で足を踏み外してしまった。
だが、
アリス「ふ〜、ギリギリセーフ。助かったぁ」
■■■A001 アリス・怪盗シルエット(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
とっさに屋根の縁(へり)の部分を掴んで落下を免れることが出来た。
フィア「もう……驚かせないでよねー」
■■■A201 フィア・妖精シルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
けれども、ほっと安心したのもつかの間で、
フィア「あーーーー!!!」
■■■A201E 妖精驚きシルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
アリス「うわっ、いきなり耳元で大声上げないでよ。この状態にも関わらず、思わず耳を塞ぎそうになっちゃったじゃん」
■■■A001E 怪盗驚きシルエット(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
フィア「ちょっと! 何そんなに落ち着いてるの?! はっ、まさか気付いていない!? 手! 手っ!」
アリス「え? ……手? 何を――って! ボク、絵画落としちゃってるよ!」
フィアに言われて自分の手を見てみれば、その両手は屋根の縁をがっしりと掴んでいた。
つまりは、今しがたありがたく戴いた三億円の絵画を手放してしまったのだ。
フィア「早く回収して!」
アリス「え? でも魔法は使っちゃ――なんてことを言ってられないか」
■■■A001D 怪盗困惑シルエット(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
ここでむざむざ地面に落とし、壊れて汚れてただのゴミになってしまっては、今日の苦労が水の泡だ。
アリス「えいっ」
■■■A001 アリス・怪盗シルエット(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
縁を掴んでいた手を離し、絵画を追って落下する。
フィア「ナイスキャッチ!」
■■■A201C 妖精喜びシルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
そして何とか地面に衝突する前に拾うことが出来た。
フィア「アリス、急いで浮いて!」
■■■A201 フィア・妖精シルエット(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
だがこのままでは万有引力の法則によって、代わりにボクが地面に衝突してしまう。
もし衝突すれば、地面にボクの最後の芸術作品になる赤い華が咲き乱れるだろう。
アリス「うん――フライッ!」
けれども、その法則を無視してボクは空(くう)を蹴るように、屋根へ向かって舞い上がる。
そして華麗に着地――とは残念ながらいかず、着地した次の瞬間足元がふらつき尻餅をついてしまう。
アリス「あれれ。体に力が入らないよ」
■■■A001D 怪盗困惑シルエット(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
フィア「アリス、大丈夫? 今のは浮いて速度を落とせば良かったのに。それを無理して飛んじゃうから、慣れ
ない反動がきたんだよ」
アリス「そっか。とっさのことだったから、イメージしやすい魔法を使っちゃった。確かに速度を落として地面に着地で良かったんだよねー。何かすごく魔力を消費しちゃった。あはは」
■■■A001 アリス・怪盗シルエット(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
フィア「もうそろそろ魔力の残量が危ないね。ここからは魔法なしで逃げないと」
アリス「いや……それはキツイでしょー。まだ美術館の敷地内――というか、屋根の上だし」
フィア「でも――」
警備員「見つけたぞ! あそこだ!」
またもやフィアが何かを言いかけた瞬間、地面から巨大ライトに照らされ、夜の闇に紛れていたボクたちの姿が鮮明に映し出されてしまった。
■■■G001 美術館の屋上で光に照らされるアリスとフィア ☆
アリス「あらら。今日は時間ロスがあったからなぁ〜。囲まれちゃった」
見ればライトの光から外れた屋根の上には、すでに何人もの警備員がボクを包囲しようと距離を縮めている。
手持ちのライトを持っており、その光の数は前後合わせて十個ほどに見える。
警備員「この絵画泥棒め! 観念して捕まれっ!」
屋根の上にいる誰かがそう言った。
でもボクは全然動じない。
アリス「ボクはまだ青春真っ盛りのピチピチの乙女なんだし、ここで捕まって刑務所暮らしは勘弁かなぁ」
余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)でそんな軽口を叩くとフィアが、
フィア「ピチピチなんて今時死語じゃないの? 少し古臭いよね、アリスって」
アリス「うるさいなー。いいのっ! ボクは今を時めく華の乙女なんだから」
フィア「また古い表現を……。ひょっとして、年齢偽ってない?」
アリス「あ、ひっどーい。ボクはれっきとした学生だよー。年齢だって偽ってないもん」
警備員「屋根の上にいる人物に告ぐ! 大人しく観念して、盗んだ絵を返すんだ!」
アリス「あ」
フィアとの会話に夢中になり、すっかり今の状態を忘れていた。
下を見れば、警備員の一人が拡声器を持ってこちらに向かって色々と叫んでいる。
とりあえず、急いでこの場から逃げないと。
■■■B001BL 美術館屋根上・夜(背景CG)
アリス「――で、この状況で魔法は使うなと?」
■■■A000 アリス・怪盗(背景に重ね表示)
さすがに屋根の上にいては、その逃げ道は限定される。
屋根伝いに逃げようにも警備員がいて逃げ切れそうにない。
かといって、うまいこと地面に降りれたとしても、それは敵陣へと無謀に突っ込むことに他ならない。飢えた狼の中に兎が飛び込むようなものだ。
フィア「はぁ。予定通りにいってればこんなことにはならなかったはずなんだけど……」
■■■A200B 妖精悲しみ(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
アリス「過ぎたことは仕方がないって。『過去を見るな、今を見ろ』だよ。今のこの状態をどうにかすることが最優先でしょ?」
するとフィアが、キッ! とこっちを睨みつける。
フィア「この状況にした張本人がそれを言うの? 毎回ドジ踏むのは過去を見てないせいでしょう? ねぇ、違うの? 違うのかな? 反省の文字はアリスにはないの? ないのかな〜?」
■■■A200A 妖精怒り(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
フィアの小さな顔が視界いっぱいに広がる。
アリス「うっ、ちょっと……フィア、怖いよ?」
■■■A000G 怪盗汗顔(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
フィア「…………」
アリス「えーっと……そんなに怒ると皺が出来て可愛い顔が台無しだよ? ほら、笑顔笑顔」
フィア「……………………はぁ」
■■■A200H 妖精呆れ(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
フィアは目を瞑りながら首を左右に振ると、
フィア「あ〜あ、何でフィアはこんなドジな子に頼らないといけなくなっちゃったんだろう。もっとしっかりした普通
の子だったら良かったのに……」
アリス「ボクはドジじゃないと思うけどなぁ。ちょっと抜けてるところがあるくらいでさ」
■■■A000 アリス・怪盗(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
フィア「それでも十分問題だよ! 」
■■■A200A 妖精怒り(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
再びフィアが怒鳴った。
フィア「フィアと出逢って怪盗始めてから、まだ一度も穏便に事を済ませたことないでしょ?! フィアが一生懸命下見に行って、念入りに作戦を立てているのに! それを台無しにするのは、いつもアリスのミスだよね? 今日は転んで非常ベルを鳴らしちゃうし、この前は出口をどう間違えたのか警備員室のドアを開けちゃうし、その前はターゲットの彫刻を落として壊しちゃうし!」
アリス「あ、あんまり怒らないほうがいいよ? ほら、また顔に皴が出来て可愛い顔が台無しになってるよ? ……それに『失敗は成功の元』って諺(ことわざ)もあるわけで――」
■■■A000G 怪盗汗顔(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
フィア「ねぇ、アリス」
■■■A200 フィア・妖精(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
アリス「な……何かな?」
普段と違う、少しトーンを落とした声色に、ボクはちょっと怯んでしまう。
フィア「『三度目の正直』って諺も知ってるよね?」
アリス「……うん」
フィア「『仏の顔も三度まで』って諺も当然知ってるよね?」
アリス「…………うん」
フィア「アリスはもう三回どころか五回も連続でミスしてるよね?」
アリス「………………うん」
フィア「……………………」
アリス「……………………それで?」
あ、しまった!
フィア「だからフィアは怒ってるんだよ! 何で毎回毎回注意してくれないのさ! これじゃあこの先、簡単に作
業が出来なくなっちゃうでしょ?!」
■■■A200A 妖精怒り(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
思わず口から零れてしまった言葉によって、フィアはついに爆発してしまった。
うぅぅ、言葉に出すつもりなんて全然なかったのに〜。
アリス「……………………ごめんなさい。今度から気をつけます」
■■■A000B 怪盗悲しみ(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
フィアの怒りの形相が怖く、軽口も叩けずに素直に謝るしかなかった。
これでも気をつけているつもりではないんだけどなぁ。
たまたま毎回運が悪いだけだよ。
――って言いたいけど、それを言ったらさらにお叱りがくることは目に見えている。
余計なことを言わないように、ひたすら口にチャックをしておこう。
警備員「おいっ! 聞こえているのか! すでに屋根の上も包囲されている! 逃げ場は無いぞ! 大人しく盗んだものを返して捕まりなさい!」
フィア「……はぁ、ここで怒っていても仕方ないし、今日のところはこれまでにするけど、今度こそは気をつけてよね?」
■■■A200 フィア・妖精(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
アリス「うん。気をつけるよ」
■■■A000 アリス・怪盗(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
どうやら警備員の怒鳴りに似た声で、フィアの怒りが削がれてしまったらしい。
助かった。
フィア「体の方はもう大丈夫?」
アリス「あ、うん。もうそれくらいなら回復したよ」
体に反動をつけ、跳ね上がって立ち上がる。
フィア「それならフィアの言うように動いて。失敗したら怒るからねっ」
アリス「ガンバリマスヨ」
そんなボクの返事に嘆息しながら、フィアは耳元で逃げる算段を伝えた。
※一時、画面を暗転。画面中央から、時計回りに黒くする。
■■■B001BL 美術館屋根上・夜(背景CG)
アリス「オッケ、オッケー。任せなさい!」
■■■A000 アリス・怪盗(背景に重ね表示)
フィア「念を押して言うけど、失敗しないでよね?」
■■■A200 フィア・妖精(背景に重ね表示)<アリスと並べて表示>
アリス「分かってるって! じゃあ逃げるとしますか。ほいっ!」
●●●SE040 空を切る音(ヒュヒュン)
作戦通り、懐からおはじきを取り出し、それを地面から照らす巨大ライト、警備員の持つ手持ちライトに向かって投げつける。
●●●SE031 ガラスの割れる音2(パリーン)
アリス「よしっ、全弾命中! 魔法様々だねっ!」
■■■A000C 怪盗喜び(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
電球が破壊され、ライトの光が消えてまた暗い闇が辺りを包む。
フィア「喜ぶのは後! 今のうちにこの場から逃げるよ!」
アリス「言われなくても!」
■■■A000 アリス・怪盗(背景に重ね表示)<フィアと並べて表示>
闇の中、ボクは難なく屋根の上にいた警備員の横をすり抜ける。
そして最後にいつもの一言。
アリス「今日もお勤めごくろうさまでした〜。また近い未来、一緒に遊びましょうねー」
こうしてボクは今日もお仕事を完遂し、夜の街並みへとその姿を消していった。
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