1週間前、僕に彼女が出来た。

 僕はそれまで彼女の事はほとんど知らなかった。

 ただ綺麗な人がこの学校にいるという事くらいしか。

 その人が突然僕に告白してきてくれた。

 僕はもちろん喜んでOKした。だってこんな綺麗な人が告白して来てくれたのだから。

 しかしそれは間違いだったのかもしれない。

 まさか彼女がこんな人だとは知らなかったのだから。

 

 

   僕の彼女

 

 

 僕の彼女は学校では物静かで勉強が出来る優等生だった。

 話し方も穏やかでまるでやまとなでしこのような人にも思えていた。

 しかしプライベートでは全く別の人のようだった。

 それを知ったのは一昨日の事。

 学校が休みだったこの日、僕は夜になり突然彼女の家に招待された。

 突然家に呼んで何だろうと色々な事に想像を膨らませ僕は彼女に家に言った。

 どうやら家族は帰ってきていないようで、そのまま部屋へと案内される。

 そして彼女の部屋で見たものは、『夜露死苦』 『喧嘩上等』が書かれた特攻服と言う

ものだろうか。それが部屋の壁に飾られていた。

 さらには木刀や何やら赤いものがこびり付いた金属バットもあった。

「ふふふ、驚いた?」

 彼女は僅かな含み笑いをしながら僕に聞いてくる。

 それが今の僕にとっては悪魔の笑みに見えた。

「・・・・・・」

 何を言っていいのか分からない。

 まさか彼女がヤンキーだったなんて事実に衝撃を受けていた。

 学校でのあの優等生の姿からは全く想像も出来ないことだ。

「ん?私の事嫌いになったか?」

 そう聞きながらポケットに入れていたタバコを取り出し、それを口に加え火をつける。

「すー。ぷはぁ〜」

 彼女がはいたその煙が僕の顔にかかる。

「ごほっ!ごほっ!」

 タバコを吸った事のない僕はその煙を吸い咳き込む。

 そんな僕を見ながら彼女は話し出す。

「私さ、実はレディースの頭なんだわ」

「そ、そうなんだ」

「だけどそろそろ私たちも受験だろ?だから次のやつらに代を譲ろうと考えてるんだ」

「う、うん」

 彼女は淡々と話す。

 でも何で僕にそんな話を聞かせるのだろう。

「たださ、引退するには男を好きにならないといけないんだよな〜、これが」

「えっ!?どういう事?」

「硬派で通してるわけだから男に惚れたらもう終わりって事だ」

「そうなんだ。じゃあ僕に告白したのはレディースを抜けるためだったって事?」

「すべてがすべてそうってわけじゃないけどな―――っと電話か」

 彼女の携帯が鳴り出した。

 彼女はそれを取り、電話に出る。

「ああ、私だ。何!?紅のやつらがうちのシマ荒らしてるだと!よし分かった。いますぐ集

めれるやつ集めろ。私もすぐに行く」

 そして電話を切る。

「ちょっと用事が出来た。今から出かけるから今日のところは帰ってくれ」

「あ、ああ。うん」

 そう言われ僕は彼女の家を出た。

 たださっきの電話はレディースの人からのようだったので少し気になり近くの電柱から

彼女が出てくるのを待ってみた。

 5分くらい経っただろうか。

 彼女の家のガレージからマフラーを改造してあるだろうバイクの廃棄音が轟く。

 そしてバイクに乗った彼女がどこかへ向かって猛スピードで走り去っていった。

 電灯の灯りによって見えた彼女の姿は白い特攻服に、背中にはさっき部屋で見た金

属バットらしきものを背負っていた。

 それを見て僕は改めて実感した。

 彼女がレディースなのだという事を。

 こんな普通な僕がこれからも彼女と付き合っていけるのかとても不安でたまらない。
 


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