わたしとぽち


 ただ今の戦績――九戦……九連敗。

 ええ、未だ勝ち無しですさ。

 高校入ってから頑張っていたのに! 色々頑張って媚びてもみたのに!

 なんでいつも負けるんだろ……。

 でも、今度こそ……今度こそ勝ってみせる。今回はかなり自信があるんだからっ!

 

 

 現在、校舎裏でわたしは、これまでの粉骨砕身した結果を求めて、十戦目を挑んで

いる最中だった。

「あの……わたし、護(まもる)君のこと……好きです! だから、あの……も、もし、護

君さえ良ければ……わわわ、わたしとっ! 付き合ってくださいっ!」

 これまで九回同じような展開があったけど、やっぱりこの瞬間は何度目だろうが関係

ない。すごく緊張する。

 手の平には汗がびっしゃりと書いているし、顔は耳までもが熱くなっているのを感じ

る。とても相手の顔を見て言える言葉でもなく、瞼(まぶた)はぎゅーっと閉じている。

 当然のように目の前は真っ暗だ。何も見えない。

 護君は今どんな顔をしているのだろう。やっぱり突然の告白に戸惑った顔をしている

のかな。

 ゆっくりと瞳を開いて、正面に立っている護君の顔を見ている。

 眉をしかめて困った顔をしていた。

 あれ? これってまさか――

「悪いな。香坂(こうさか)の気持ちは嬉しいんだけど……実はさ、もう付き合ってる彼

女がいるんだ。だから、その気持ちは受け取れない」

 そんな……嘘……でしょ?

 だって、「香坂といると楽しい」って言ってくれたじゃない……。

 何もないところで、自分の足に引っかかって転んだ時だって、笑いながら「そういう可

愛いドジをする香坂って可愛いな」って言ってくれたのに……。

「ごめんな。でも香坂のこと、嫌いじゃないから。友達としてならすごく気が合ってたし、

付き合うことは出来ないけどさ、これからも仲のいい友達で――」

「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 私は最後まで言葉を聞かずにその場から逃げ出した。

 とてもじゃないけど、あの場には長々といられなかった。

 だって、だって! 涙が……涙が溢れてきっちゃったんだもん。見られなくないよ。こ

の涙は……。

 それにあそこで泣き出したら、きっとその場で座り込んで泣きじゃくっていたに違いな

い。そんなみっともない姿を見られるのは嫌だった。

 だから、感情のタガが外れる前にその場を逃げ出すしかなかったのだ。

 

 

「――ぐすっ……またフラれたぁ。何でだよぉ」

 わたしは一人、屋上で泣きまくっていた。

 基本的に屋上は立ち入り禁止のために、人が来ることはまずない。だから思いっきり

泣けるのだ。

 ただ今の戦績――十戦……十連敗。

 このたった二年の間で、わたしは不本意ながら連敗記録を順調に伸ばしていた。

 今度こそは、って思っていたのに……。なんでいつもこうなんだろう。

 友達としては好き。もう彼女がいる。好きな人がいる。

 そんな理由でわたしはフラれ続けてきた。

 もしかしたら女としての魅力がないのだろうか。

 でも顔はそれほど悪くないと思う。自分で言うと説得力がないかもしれないが、それ

でも好きな人に綺麗な姿を見てもらいたいがために、色々外見には気を使っている。

 朝は早起きしてシャワーを浴び、自慢の長い髪のセットは毎日かかさないし、相手が

不快に思わない程度の気持ち程度の香水だって忘れていない。

 それに極力甘いものは控えて体型が崩れないようにしている。これでも胸はあるほう

だと思うから、ウエストが引き締まっているわたしの体型は結構自信があるのだ。

 それなのに……はぁ、なんでいつもフラれちゃうんだろう。 

 

 

 気が済むほど泣いて涙が枯れ果てると、わたしは意気消沈しまくりで、まるでB級ホ

ラーのゾンビのようにのっそのっそとした動きで屋上を後にする。

 一度トイレに行き、目が腫(は)れて醜くなった顔を洗って直すと、教室へ鞄を取りに

戻ってそのまま昇降口まで朦朧(もうろう)とした意識のまま向かう。

 靴を履き替え校門を出ようとすると、誰かがわたしの行く手を阻むようにして立ってい

た。下を見て歩いていたために、足しか見えなかったが、立ち塞がっている人物は学

生ズボンを履いているように見える。

 でもそれが誰なのかは気にならなかった。顔を確認する気も起きない。誰だろうとも、

わたしにはどうでも良かった。

 このまま真っ直ぐ行くとぶつかるために、少し方向を修正して横を通り抜ける。

 すると、

「――待ってください!」

 後ろからわたしを呼び止める声が聞こえた。さっきの人物が呼び止めたらしい。

 わたしは立ち止まり、ゆっくりと後ろを振って視線を上に移動させた。

 それは可愛い少年だった。まだ中学生でも通用しそうな童顔で、すごく愛らしい顔を

している。背も低かった。わたしで百五十センチくらいなのに、それよりもまだ少し低

かった。

 でも少年の着ている学生服は、この近くにある高校の男子の制服だった。つまり、そ

んな容姿をしていても高校生ということだ。

 少しだけ驚く。今までこんな小さい高校生の男の子は見たことなかったから。

「……何か用?」

 声を出すの億劫(おっくう)だったが、それでも聞かないわけにはいかなかった。

 しかし、少年は体をもじもじさせるだけで何も言わない。

 少し待ってみたが何かを言う様子がないために、わたしはまた振り返って帰ろうと足

を進める。

「――待ってください!」

 また後ろから声が聞こえた。

 一瞬、また立ち止まって振り返ろうと思ったが、もう振り返るのすら億劫になり、この

まま少年を無視して帰ることに決める。今は誰かと話をする気分ではない。

 だが、何歩か進んだところでわたしは突然手首を掴(つか)まれてしまう。

「待ってください!」

「いきなり触らないでよ!」

 ゴン

 見知らぬ相手にいきなり手首――体を触られてしまい、機嫌の悪い私は握られた手

とは逆の手に持っていた鞄を思いっきり少年の頭にぶつけた。

 痛みに頭を押さえたために、わたしの手首を握っていた手が離れる。

「わたしは今、すごく機嫌が悪いんだから話しかけないでよ! それにいきなりわたし

の体を触るな! 次に触ったら痴漢って叫んでやるからね!」

 そう怒鳴ると、わたしは再び帰ろうと足を進めた。

 ――が、またもや少年はわたしに触れる。今度は手を握ってきたのだ。

 頭にきたわたしは「痴漢!」と叫ぼうと大きく息を吸った。そして思いっきり叫ぼうとし

たわたしの一瞬前に、少年が大きな声で叫ぶようにしていった。

 

 

「僕をあなたの犬にしてください!!!」
 


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あとがき

投稿小説を書く合間に書いた息抜き作品。
描写を結構手抜きしているので、かなりテンポがいいと思います。
これを投稿用に書き直したら、きっと字数が三倍以上に増えるかと(苦笑)

こんな感じで話が展開したらいいなぁ、と思うものの、
現状のセンスではここから話を繋げていくのは無理っぽい。
修行(どんな?)の余地ありですね。