これはヘンゼルとグレーテルのもう1つのパラレルなお話です。

 でも版権とかよく分からないので名前は変えてあります。

 

 

   ルーベルとフランソワ

 

 

 ある大きな森の側に貧乏な木こりの一家が住んでいました。

 この一家は4人暮らしで住んでおり、ルーベルという男の子とフランソワという女の子の

2人の幼い子供がいました。

 この家族はなにせ貧乏なもので、その日の食べ物でさえ手に入らないありさまで、い

つもお腹を空かせていました。

 ある夜、ルーベルとフランソワはあまりの空腹にいつまでたっても眠れずにいると、お

父さんとお母さんが部屋の外でヒソヒソと何かを話していました。

 2人は「何を話しているんだろう?」と思い、ドアに耳を当てよく澄ましてお父さんとお母

さんの話を聞いてみました。

 するとお母さんがお父さんに、ルーベルとフランソワを森に置き去りにして捨ててしまお

うと相談していたのです。

 2人はそれを聞いて驚きました。

「お兄ちゃんどうしよう?私たち捨てられちゃうの?」

「大丈夫。例え捨てられてもまたここへ戻ってくればいいさ」

 心配そうにルーベルを見るフランソワに、安心させようとルーベルは優しく髪を撫でてあ

げた。

 そしてお父さんとお母さんが寝静まった頃にルーベルはそっと家を抜け出し、上着とズ

ボンのポケットに入れられる限りの白い小石を詰め込んで家に戻っていった。

 

 

 朝起きるとお父さんとお母さんが「一緒に森に行こう」と提案したので一緒に森の中へ

入ることになりました。

 それを聞き、ルーベルはこのまま捨てられると予感したので、森に入ったらお父さんと

お母さんに気付かれないように、時々止まっては昨日の夜に拾ってきた小石を地面に落

としていきました。

 4人がかなり森の中に入ったところで、座るにはちょうどいいような大きな切り株があっ

たので、そこに2人を座らせるとお母さんはパンを一切れずつ渡し、こう言いました。

「お父さんとお母さんは森の中で木を切ってくるから、おまえたち2人はここに座って大人

しく待っていなさい」

 ルーベルはここで昨日のお父さんとお母さんの話は本当だったと確信しました。

 1日にパンを一切れも食べれるなんてことは今まで無かったのだから、多分これが最

後の食事にするつもりだったのでしょう。

 それでも少しは嘘だと思いたい気持ちがあったので、日が暮れ、そしてあたりが真っ暗

になるまで切り株に座って待っていましたが、やっぱりお父さんとお母さんは迎えに来ま

せんでした。

「お父さんもお母さんも迎えに来ないね」

「やっぱり昨日の話は本当だったんだ」

 ルーベルは最後の希望も裏切られたことに悲しみましたが、月明かりが森の中を照ら

す頃になると、ここに来るまでにルーベルが時々落としていた白い小石が月明かりに照

らされて、ピカピカと光り始めました。

 2人はその光を辿っていくと自分の家に戻ってくることが出来ました。

 家に戻ると、お母さんは2人の顔を見るととても驚いたようですが、特に何も言いませ

んでした。  

 

 

 それからしばらく経ったある夜、ルーベルとフランソワがまた空腹で眠れないでいると、

また部屋の外からお父さんとお母さんがヒソヒソと何かを話していました。

 ドアに耳を当てよく澄まして聞いてみようとしましたが、今度は声が小さくて全然聞き

取ることが出来ませんでした。
 
 何を話しているのかは分からなかったけど、ルーベルはまた捨てられるのかと不安に

なったので用心に越したことはないと思い、お父さんとお母さんが寝静まった頃に家を抜

け出し、また白い小石を拾ってこようとしました。

 しかし残念なことに今度はお母さんがドアに鍵を掛けてしまっていたので家から抜け出

すことが出来ませんでした。

 

 

 次の朝、またお父さんとお母さんの提案でルーベルとフランソワを連れて森に行くこと

になりました。

 前と同じだったので2人はとても不安になりました。

 まだ前回は目印になる白い小石を落として行けたので良かったですが、今回はルーベ

ルのポケットには白い小石はありません。

 「困った。どうしよう」とルーベルが考えていると、運良く今度は森に入る前にお母さん

がパンを2人に一切れずつくれました。

 ルーベルは仕方がないので、その貰ったパンをポケットの中で細かく千切って、それを

何度も止まっては落として進んでいきました。

 すると今度は前よりももっと森の奥に進んでいき、同じように切り株に座って待たされ

ました。

 夜まで待っていましたが、やっぱりお父さんもお母さんも迎えには来てくれません。

 それなので目印のパンくずを辿って家に戻ろうとしましたが、肝心のパンくずがどこにも

ありません。

 実はそのパンくずは、森の鳥たちがみんな食べてしまったのです。

 そのために今度は夜になっても家に戻ることが出来なくなってしまいました。

 

 

 2人が道に迷って3日が経ちました。

 幼い2人はお腹を空かせながら、まだ森の中をさ迷っていました。

 ただでさえ空腹でそれほど肉付きが良くなかった体が、より一層肉が落ちていました。

「お兄ちゃん。もうお腹が空いて動けないよ」

 今まで我慢してルーベルの後を歩いていたフランソワでしたが、ついに限界が来たらし

くその場に倒れこんでしまいました。

「諦めるな。頑張って歩くんだ」

 ルーべルは励ましましたが、フランソワはもう自分ではもう動けそうにありません。

 フランソワがもう動けないといっても、大事な妹をその場に置き去りにして自分だけ進む

わけには行かないので、ルーベルはフランソワを背負って歩き始めましたが、ルーベル

にももうそれほど体力が無かったので、数歩も歩かないうちに倒れてそのまま気を失っ

てしまいました。

 

 

 ルーベルが意識を取り戻すと、そこは森の中ではなく、どこかの部屋のベットの上でし

た。少なくとも自分の家の部屋ではありません。

 その部屋はあまり広くなく、壁にはタンスが1つと、床には色々な子供のおもちゃが転

がっており、また外が見える窓もあって、家庭菜園みたいに色々な野菜とかが出来てい

る庭が見えました。

 ふとフランソワはどこかと部屋を見渡すと、すぐ横にあったもう1つのベットでフランソワ

は寝ていました。

 ルーベルがフランソワがいることを確認すると、突然部屋のドアが開きました。

「あっ、気がついた?」

 部屋に入ってきたのはルーベルより少し年上の女の子でした。

 ここはどこなのか分からないし、その女の子も誰かは分からないので、ルーベルは警

戒しました。

 しかしその女の子が空腹のルーベルに食べ物を与え、色々と説明をしてくれたので今

の現状がルーベルにもやっと分かりました。

 ルーベルとフランソワがあそこで倒れた後、ここに住んでいるお婆さんが偶然通りかか

り助けてくれたという事でした。

 そしてここは森の中にひっそりとある、お婆さんがあちこちで捨てられた子供たちを拾っ

て育ててくれている家でした。

 この女の子の他にも20人くらいの子供がお婆さんに拾われ生活していると話してくれ

ました。
    
 一通りの簡単な説明が終わった頃に、フランソワも目が覚めました。

 それからお婆さんに会って、他に行くところがない2人はそのままそこでみんなと生活

することにしました。 

 

 

 ここでは自給自足の生活になるので、それからはみんなと一緒に野菜などを作って生

活をし始めました。

 自分で食べるものを作るのは大変ですが、食べ物には困ることがありませんでした。

 そんな生活を始めて3ヶ月が経った頃、そこで生活をしていた1人の青年が20歳にな

り、この家から出て行くことになりました。

 それはこの家のルールで、『成人になったら自立して生きていく』と決まっていたからで

す。

 しかしいきなり無一文で出て行くわけではなく、それなりのお金をお婆さんはくれます。

 ちょうどそのとき、青年にあげるお金を金庫から出しているお婆さんの姿を、少し開いて

いたお婆さんの部屋のドアからルーベルは見ました。

 そして見た金庫の中にはたくさんのお金が入っていました。

 その夜、ルーベルはそっとフランソワを部屋から呼び出し、ある恐ろしい提案を持ちか

けました。

「ダ、ダメだよ、そんなこと」

 フランソワはその提案に猛反対しましたが、

「フランソワはお父さんに会いたくないのか?」

 まだ幼いフランソワはお父さんに会いたい思いに負けてしまい、ルーべルの提案に乗

ってしまいました。

 

 

 次の朝の朝食に『それ』は起きました。

 いつも通りみんなで朝食を取り始めると、突然食事を食べた全員が口から血を吐き出

し、次々と苦しみながら倒れ始めたのです。

 そして少しの間呻き声が続いていましたが、しばらくするとその呻き声も消え、静寂が

訪れました。

 その静寂した中、血の匂いが充満するこの場所に立っていたのは、食事を食べていな

かったルーベルとフランソワの2人になっていました。

「みんな死んじゃったね」  

 すでに息絶えた子供たちやお婆さんを見て、フランソワは悲しそうに涙を流しました。

「これでいいんだ。このお婆さんが持っていたお金があればお父さんたちとまた暮らして

いける。これでいいんだよ」

 ルーベルは泣いているフランソワをギュッと抱きしめ、そう言いました。

 そう。昨日の夜にルーベルがフランソワに持ちかけた提案は、『この家に住んでいるみ

んなを殺して、この家にある財産を奪う事』だったのです。

 そして2人が食事当番だった今日の朝、こっそりと食事の中に毒を入れてみんなを殺し

てしまったのです。

 それからすぐにルーベルはお婆さんの部屋に行き、金庫からお金や金目の物を袋に詰

めました。
 
 一方、フランソワは台所で食べ物を袋に詰めていました。

 そしてこの血の匂いが充満する家をさっさと出て行きました。

 

 

 2人が森の中を1日歩いていると、嬉しいことによく知っている―――家に帰る事の出

来る道に出ました。

 すぐに走り出して家に戻ると、少しやせ細ったように見えるお父さんは2人の無事な姿

を見てそれはそれはたいそう喜びました。

 一方、お母さんの方はというと、すでに病気で死んでしまったということでした。

 家に入ると、ルーベルは持ってた袋をテーブルの上で広げて、お父さんにお金などを見

せました。そしてフランソワもテーブルの上で袋を広げて、お父さんにたくさんの食べ物を

見せました。

 それを見てお父さんは驚きました。

「こんないっぱいのお金や食べ物をどうしたんだい?」

 お父さんが当然の質問をすると、2人は声を揃えて言いました。

 

 

『森にいた子供を食べる悪い魔女を退治して貰ってきたの』

 

                                            終わり

 

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