第1章 出会い・告白 第1話 


 私の名前は香坂明日香。今年の春(2週間前に)公立清廉高校に入学したピチピチ

の女子高生。誕生日は9月22日のギリギリおとめ座です(笑)

 この話はこれから私が出会う運命の人である京君と、私の色々な友達との学校生活

を書いたお話(だと思いますw)です。

 

 

 

 

 

トントン

「姉ちゃん、早く起きろー」

 心地よい眠りについていた私は、突然のドアを叩く音と、弟の大きな声によって起こさ

れた。

「もう朝だぞ。早く起きないと学校遅れるぞー」

 もう朝になったのか〜。全然寝た気がしないな。って、それはそうか。昨日は深夜の

3時まで漫画読んでたっけ。

 枕元にある目覚まし時計を見ると、時計の針は7時30分を指していた。20分にアラ

ームがなるはずだが今は鳴っていない。無意識に切ったのだろう。

 家から私の通っている高校までは、歩けば20分。走れば10分くらいで着ける。

 それなのでまだ眠いからもう少しだけ寝ても問題ないだろうと思い、

「あと5分で起きる〜」

「ホントかよ。・・・まあいいや。あと5分で起きろよな」

 そう言うと弟は部屋のドアから去っていく。

 眠りを邪魔するものはいなくなり、私は再び心地よい眠りの中へ落ちていった。

 

 

「ちょっと和哉!何で早く起こしてくれないのよ!」

 時計の針はすでに8時10分を指していた。遅刻ギリギリな時間だ。

 私は急いで制服に着替え、学校へ行く仕度をしている。鏡を見たら寝癖が立っている

が今はそんな事を気にしていられない。

 私の高校は規則により遅刻3回すると罰として、放課後に校庭などの草むしりをしな

いといけないのだ。

 そして私は入学してまだ2週間しか経っていないというのにすでに遅刻2回。リーチが

かかっていた。

「何言ってんだよ、姉ちゃん。俺はちゃんと30分に起こしたって」

「嘘いいなさい!なら何で私がこんな時間に起きることになるのよ!」

「それは姉ちゃんが悪いって。『あと5分』って言って起きてこないからまた起こしに行っ

てやったらさ、また『あと5分』ってのを何回も繰り返すんだもん」

「うっ!」

 そう言われるとそんな事を何回も繰り返していたような・・・。

「俺に文句言ってる暇あったら早く学校行けよ。最近ずっと遅刻ギリギリなんだからよ」

「言われなくても行くわよ!」

 そして私は朝食も食べずに家を飛び出し、全力で学校へと向かって走っていった。

 

 

「ぜーはー。ぜーはー」

 学校へ着くとすぐに机へ突っ伏した。全速での疾走はいくら走るのが得意でもやはり

キツい。しかも朝食抜きでうまく力が出なかったし。

「おはよう、明日香」

 机で半分死んでいる私の前に大親友、木崎燐華(きさきりんか)が来た。

「おはよー、燐華」

「ん〜。その様子を見ると今日も全力疾走だった?」

「まあね」

「最近よく寝坊するね〜」

「多分最近燐華が迎えに来ないからかも」

 燐華とは小学校からの付き合いなので家がとても近い。そのために今まではいつも

燐華が迎えに来て一緒に学校へ行っていたのだ。それに私が通っていた(今は和哉が

通っている)中学は家から歩いて5分なので、今日くらいに起きても何にも問題なかっ

たのだが、高校に入ってからは距離が遠くなった上に、燐華がテニス部に入ったので

朝練で先に行ってしまい、誰も迎えに来ないのだ。

「あはは。ダメだよ。自分で起きないと」

「目覚ましセットしても気付くと切ってあるんだよ。だから自分じゃ起きれそうにない」

「弟君は?」

「頼んでるけど全然ダメ。起こしてくれてるみたいだけど私が気付いていない」

「じゃあ、おじさんとおばさんは?」

「現在行方不明」

「あらら。またなんだね」

 私の両親の場合は、行方不明と言ってもそれほど深刻な問題ではない。

 昔から私の両親はそうなのだが、自分の子供に何も言わずに突然どこかへ行ってし

まう放浪癖があるのだ。昨日の夜は普通にいたのに、朝起きたら姿形もなく消えてい

るなんて事が過去に何度あった事だろうか。

 そして毎回突然消えるとキッチンのテーブルの上には必ず書置きが置かれており、

それにどこへ行くのかの内容が書かれていた。

 しかしその書置きはすごく適当に書かれており毎回正確な場所が書かれていない。

 覚えてるところで挙げるなら、『日本は夏で暑いからちょっと涼んでくるね♪』とか、逆

に『日本は冬になって寒いからちょっと砂漠辺りで避冬してくるね♪』とか、『急にオーロ

ラ見たくなったから行ってきまーす♪』があった。

 そして今回は1週間ほど前に姿を消しており、書置きには『南半球でサーフィンやって

くるから♪』と書かれていた。絶対あの2人はバカだ。そうに違いない。いい歳した大人

が子供を放って遊びに出かけるなんてありえない。

 しかし何回行っても2人は聞かずに毎回突然消えていく。そして何日か経って私が学

校から帰ってくると、何事もなかったかのように「おかえり〜。今日の夕飯何がいい?」

と言ってくるのだった。

 最初のうちは突然消えて突然戻ってくるのには怒りもしていたが、何回言ってもやめ

ないので『もう何言っても駄目』と悟り、今は私も和哉もそれに関しては何も言わなくな

っていた。しかし1年の半分はどこかに行っててロクに働いてないはずなのに、どこに

そんな旅行する金があるのかが不思議で堪らないけど。

「南半球でサーフィンやってくるって書いてあった」

「そっか。明日香も毎回大変だね〜」

「もう慣れたよ。それに親がいなくてもうちには優秀な弟がいるから問題ない」

「和哉君にばっかり頼らないで自分でも色々家事やらないと」

 少し燐華は呆れながら言ってきた。

 そうは言っても確実に和哉の方が料理・洗濯・掃除は出来るのだ。

 私の場合、料理すれば黒焦げになるし、洗濯すれば洗剤の泡が溢れ出してくるし、

掃除すれば家具を倒して逆に凄惨(せいさん)な状態になってしまうので、情けないが

家事はすべて和哉にやらした方が良かったりする。

「でもさ、私が前みたいに迎えに行ってあげたいけど、ほぼ毎日朝練があるからね〜。

何とか草むしりしないように自分で頑張って」

 燐華は励ましてくれているが実は―――

「うん。『今度は』頑張るよ」

「『今度は』ってもしかして・・・」

 そう。今日は3回目の遅刻だったのだ。

「あと30秒早ければ間に合ったのに・・・」

「ご愁傷様〜」

 その日の放課後は1人寂しく草むしりをしていたことはいうまでもない。

 

 

 

 

 

 部屋の窓から朝日が差し込めてくる。

 時計の針はもうすぐ7時20分を指そうとしていた。

 そして20分を針が指すと、

ジリジリ リンリン ピピピピ ドンドン ピーポーピーポー・・・・・・

 私の周りに置かれている昨日買ってきたいくつもの目覚まし時計が、一斉にそして盛

大に鳴り出した。

「うわっ!」

 あまりの音の大きさに私は驚き、目を覚ました。てか、心臓止まるかと思った。

「ちょっと姉ちゃん!この音何?!」

「何でもない!」

「何でもなくないだろ!」

 和哉も突然の騒音に驚き、1階のリビングから駆け上がってくる。

 とりあえずこの音の大きさは異常だ。ドンドン音量上がっていくので鼓膜が今に破れ

そうだ。それに窓ガラスも揺れてるし、早く切らないとマズい。

 手当たり次第に目覚ましを切っていくのだが、最後の1個になったところで問題が発

生した。切り方が分からないのだ。

 それの形は卵型した目覚まし時計。普通は上の方にスイッチがあってそれで切るは

ずなのだが、そのスイッチがどこにも見当たらない。

 全体を隅々まで見てみるが、やはりスイッチらしきものは見当たらなかった。

ジリジリジリジリ・・・

 目覚ましの音はその間にもドンドン大きくなっていく。

「ああ、うるさい!これでどうだ!」

 自棄(やけ)になりついにはその目覚ましを壁に向かって投げつけた。

バキッ

ジリジリジリジリジリジリジリジリジリ・・・・・・

 
壁に勢いよく激突して壊れた目覚まし時計は徐々に音が弱くなっていき、最後には

完全に沈黙した。

「ふぅ。これでよし」

 昨日の1人で黙々と草むしりはかなり辛かったので、今度は同じミスをしないようにと

学校帰りにデパートに寄って目覚ましを買いに行き、そこで『お寝坊さんに必見!アラ

ームを切らないとドンドン音が大きくなっていく目覚まし時計』という面白そうな物を発見

した。

 それなので試しに1つ買ってみようとしたのだが、よく値段の札を見るとセットで買っ

たほうがお得で、1個2千円のところ5個まとめて買うと6千円になるらしい。

 そのためにセットで買ったほうがいいと直感で判断して買ったのだった。

 家に帰って買った目覚まし時計をよく見ると、アラームの音量を変えることが出来るら

しく、どうせなら一番大きくしちゃえと最大音量にしたのが失敗だったようだ。

 目が覚めるといえばそうなのだが、ある意味欠陥品だな。

 

 

 いつも通り着替えて1階へ降りていくと、リビングには不機嫌そうな顔をした和哉がい

た。

「さっきの何?」

「あれは新しく買った目覚まし時計の音」

 誤魔化し笑いをしながら答える。

「音大きすぎ。近所迷惑だぞ」

「仕方ないじゃん。こんな大きい音になるなんて思わなかったんだもん」

「明日からずっとこんな感じなわけ?」

「明日はもう少し小さいと思う。1個壊したし」

 和哉は大きな溜め息をついた。

「溜め息つくなんて生意気だぞ、この」

 和哉の頭の両サイドをグーで挟み、こめかみをグリグリとやる。

「痛い、痛いって。ゴメンよ、姉ちゃん」

 誤ってきたので許してやることにした。

「ご飯出来てる〜?」

「出来てるよ。久しぶりに朝ご飯ちゃんと食べるよな、姉ちゃんは」

「あはは。最近は寝坊してばっかりだったからね」

 確かに久しぶりかも。弟と最後に一緒に朝食を摂ったのがずいぶん前に思えてるし。

 朝食を食べ終え時計を見るとまだ7時40分過ぎ。まだ学校に行くには早い時間だけ

ど、久しぶりに早起きしたことだし今から学校へ行けば燐華の朝練風景が見れるかも

と思い、少し小走りしながら学校へ向かっていった。

 

 

 学校に着いて時計を見ると7時55分。まだ燐華は朝練をやっているはずだ。

 テニスコートへ移動すると、コートの周りにある金網の周りにはたくさんの男子集団が

集まっていた。見るとその集団の中にはデジタルカメラやデジタルビデオを持ってるの

もいる。

「何だ、この男子集団は?こんな朝早くにこんなとこに集まって」

 私が呆気にとられ呟いた。

 よーく見ると、その男子のほとんどがテニスコートでプレイしているある1人の女子を

見ているようだった。

 その女子とは予想通り、燐華だった。燐華は昔から男子に人気があり、中学の頃か

らよくラブレターを貰っていたり、告白されたりしているのだ。

 燐華は女の私から見ても綺麗な顔をしており、体型も出るとこはちゃんと出て、引っ

込むところはしっかり引っ込んでいる。アイドルとして芸能界に入ってもおかしくないほ

どの美少女なのだ。

 それに加え、頭も良くて中学の時はテストがあれば必ず学年で5番に入っていた。

 さらに性格の方もいい。誰に対しても親切で、誰とでも好き嫌いなく対等に接すること

が出来るので、その点でも男子の好感度が高いのだ。

 そのため高校に入ってまだ2週間くらいしか経っていないのにすでにファンクラブまで

結成されたらしい。燐華の魅力って凄いな〜。

 それに比べて私なんて全然ダメ。

 容姿的には悪くないらしい。しかし燐華に比べて女らしさがあまりなく、告白された事

なんて今までに一度もなかった。

 しかし別に男子に人気が無いわけではなかった。確かに恋愛対象としてはダメだが、

友達関係ではかなりの人気があると思う。なぜか色々と話が合ったりするのだ。

「しかし、あの男子集団の燐華を見る目が怪しい」

 テニスコートでラリーをしている燐華は流れる汗が朝日でキラキラ反射しているため

か普段よりも綺麗に見える。それに加え、袖なしシャツのスコート姿のために綺麗な腕

や足が超露出していた。きっとこの姿を見るために朝早くから集まってんだろうね。

 まあテニスウェアがああいう露出高いのは仕方ないとしよう。それに燐華は綺麗だか

らその姿を見たいという気持ちも分からなくないさ。しかし―――

「あの集団、絶対燐華を視姦してる目だ」

 私にはどうしても燐華を見る男子集団の目が明らかに怪しく光っているように見えて

仕方なかった。

「やっぱりそうですわよね〜。ここのところ毎日あんな状態なんですよ」

 隣から突然声が聞こえてきた。

 隣を見るとそこには同じようにテニスコートを見てる女子がいた。

 彼女の名前は周防幸子(すおうさちこ)。中学のときに転校してきて、その時からの付

き合いだった。燐華の次に仲のいい親友だ。

 幸子は大企業周防カンパニーの社長令嬢で、燐華に負けずとも劣らない容姿の持ち

主であり、勉強も燐華と同じくらい出来る秀才だ。

 普通なら燐華同様に人気があってもおかしくないのだが、それほど幸子に付き纏う男

子はいない。

 なぜなら幸子はお嬢様ということもあり、陰ながら優秀なボディーガードが常に幸子に

付いているのだ。そのため幸子に付き纏う男子がいるようなら、そのボディーガードに

痛い目(?)に遭わされるらしい。ホントかどうかは幸子も教えてくれないから分からな

いんだけどね。

 そのためにそれほど表立っては人気がない。しかし裏では燐華同様かなりの人気が

あるらしい。

 少し朝練風景を見ていると、テニス部の朝練が終了したようでコートから出てくる。

 そしてコートから出てくる燐華に向かって大勢の男子集団が寄っていく。

 私はその風景がとても気に入らなかった。だってみんなイヤラシイ顔して近づいていく

んだもん。これは許しがたいよ。

「やっぱり私の燐華をあんな風に見るなんて許せない。ちょっとあいつらに言ってくる」

「頑張ってくださいね」

 そして私は走ってテニスコートの周りにいる男子集団のところに向かった。

 

 

「そこのお前たち!燐華を視姦するな!」

「何だ?」

 男子集団は突然の私の怒鳴りによって一斉にこっちを見た。

 うっ!ちょっと怖い。だけどここで怯んだら負けだ。

「だから燐華をさっきみたいなイヤラシイ目で見るなって言ってるの!」

 私がそう言うと、集団の中のリーダー格らしい1人が周りの連中に聞く。

「俺たちそんな目で見てねぇよな?」

「ああ、見てねぇよ」
 
「そ、そうだぜ」

 口々にそう言っているが、明らかに嘘だ。顔から冷や汗出てるし。

「絶対嘘だ。顔にちゃんと書いてあるぞ」

「はぁ?何言ってるの?お前」

「だから、視姦してたってのがバレバレだって言ってるの!そういうの止めてよね!」

「だから俺たちはそんな目で見てねぇよ!」

 その後も私と男子の口論は続き、5分が経った頃。

「ああ!うるせえな!」

ドン

 いい加減に切れた男子によって私は突き飛ばされた。

「いったーい。何するのさ!」

「お前うるせえんだよ!さっきからよ」

「うるさいって何さ!私は変な輩(やから)から親友を守ろうとしてるだけだよ!それに

女を突き飛ばすなんて最悪〜」

 私は再び立ち上がり、男子に向かって文句を言う。

「だからお前うるせえんだよ!」

 再び男子は私を突き飛ばそうとしたが―――

ドドドドドドド

 突然の音とともに何かが男子の体に当たり、男子の体が横に吹っ飛んでいった。

「よくやりましたわ、月詠(つくよみ)」

 音のした方を見るとそこには幸子ともう1人、メイド服を着た私よりも年上の女性がい

た。そしてメイド服を着た女性の手にはマシンガンらしきものが握られている。

 このメイド服を着た女性こそが、幸子をボディーガードしている人なのだ。名前は月詠

華那(つくよみかな)だったかな。何も無いところからいつも現れるので神出鬼没な人で

ある。

「マシンガンはさすがにやりすぎじゃない?」

「問題ありません。これは模造品で、ホントは少し強力な水鉄砲ですわ」

「はい。そうですよ、明日香様。それなので命の心配はございません」

「そういう問題じゃないと思うけど」

 水圧弾が被弾して吹っ飛んだ男子は痛みのためなのか完全に気絶していた。

「いえいえ。私の大事な人を酷い目に遭わせる輩にはこれくらいの制裁は加えなくては

いけませんわ」

 幸子は何も悪びれずに言う。

 これを見ると幸子に付き纏う男子がいるようなら、そのボディーガードに痛い目に遭

わされるらしいって話は本当に思えてきた。

 しかし久しぶりに幸子が怒ったとこ見たな〜。相変わらずやることが凄い。

「月詠さんからも注意してよ。やり過ぎだって」

 怒った幸子に何を言ってもダメと分かっているので月詠さんに頼んでみると、

「ゴメンなさい、明日香様。幸子様の命令は絶対なので」

 忠誠心が強いためにこっちもやはりダメだったか。

 そんな事をやっていると遠くから騒ぎを聞いて駆けつけてくる先生たちが見えた。

「やばっ。こっちに先生が向かってくるよ」

「それはマズイですわね。逃げましょう」

 幸子の方を見ると月詠さんはすでに姿を消していた。素早いな。

 私たちも逃げようと先生が向かってくる方と逆の方に逃げる事にした。

 そう。去り際に周りにいた男子集団などに幸子が一言残して。

「もし私たちの事をバラした人がいたら、腕1本無くなるくらいは覚悟してくださいね」

 さすがお嬢様。言うことが凄かった。

 幸子の最後の言葉が効いた為であろうが、この騒ぎで私たち2人の名前が出ること

はなかった。

 

 

「おはよー、燐華」

「おはようございます」

「あっ、2人ともおはよう。明日香は今日早起きだったんだね」

「昨日さ、すごく効果がある目覚まし時計買ったから今日はバッチリだったよ」

 私は何事も無かったかのように昇降口で燐華と挨拶した。

「それなら明日からは遅刻の心配は無いね」

「余程昨日の草むしりがキツかったのでしょう」

 幸子が笑いながら言ってきた。

「もう。笑い事じゃないよ〜。ホント1人で草むしりはキツかったんだからさ〜」

「ご愁傷様。でも自業自得だよね?」

「あはは。まあそうだんだけどね〜」

 これは苦笑いをするしかない。

 そんな会話をしながら燐華が下駄箱の扉を開けると、いくつかの手紙が落ちてきた。

 それはみんな燐華へのラブレターだった。

 しかし今更驚くことは無かった。だって入学したときからずっとこんな調子だから。

「いいよね〜。毎日ラブレターが入ってるなんてさ」

 しかし貰えるってのは羨ましかったりした。

「そんな事無いって。毎日こんなんだと対処に困るんだから」

「貰える人の嫌味にしか聞こえないけど」

「もう、明日香ったら拗ねないの」

「だって私の下駄箱は開けても手紙なんて何も入ってないもん」

 そしていつも通り、何も特別なものが入っているはずのない自分の下駄箱を開けた。

 すると何か薄いものが下駄箱から落ちたのだ。

「えっ!?」

「あれ?」

「あら?」

 

 

 私の下駄箱から落ちたもの。それは可愛い封筒に入った手紙だった。
 


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